ウィッチャーを産んだデベロッパー CD Projekt REDとは!? 第3回【波乱―そのゲームは幻へ】
あいさつ
※この記事は第3回です。前回の続きですのでそちらから読むのをオススメします。
どうも、TRYDERです。
翻訳が億劫で、後回しにしていました。ごめんなさい。
しかし、意外とCD Projekt REDの記事は需要があるようで(訪問者数的に見て)、そろそろ英語に向き合う時期かなと思い立ちました。
加えて、もう一つ言っておくことが。今回で最終回ではありません、今度こそ次で最後です。
幻のタイトルThe Witcher:Rise of the White Wolfについて、wikiaでは3行程度しか書かれていないものが、eurogamerの記事では超詳細に書かれていて内容も面白いので許してください……
早くウィッチャー3に行かないとeurogamer翻訳記事のまま終わってしまいます。
それだけeurogamerの記事は詳しいので、それでも良い気がしますがただ翻訳するだけというのもなんか纏めた感が足りないなあ……
さて、恒例の私事のお時間(誰得)
最近、やっとはてなブログで目次の作り方を知りまして、見やすさが段違いですね。
ブログを快適にするにはHTMLを覚える必要があると思うのですが、色々ゲームもやりたいなとか考えてしまって……
まあ、それはともかくさっさと始めます。
主要登場人物
- Marcin Iwiński(マルチン・イヴィンスキ)―CD Projektの創設者
- Michal Kiciński(ミハル・カチンスキ)―CD Projektの創設者。セバスチャンが去った後のThe Witcher開発を主導。
- Adam Badowski(アダム・バドウスキ)―CD Projektのストーリーボードアーティスト、現CD Projekt REDトップ。
- Phil Harrison(フィル・ハリソン)―アタリの親会社であるインフォグラム・エンタテインメントの社長(当時)
1.続編に向けて
The Witcherは傑作では無かったが、商業的にも評価も暖かく迎えられたことから続編を保証する十分な可能性があった。
CD Projekt REDは直ちに次のプロジェクトに取りかった。
The Witcher:Enhanced Edition*1制作の後、一度にThe Witcher 2・The Witcher 3のプロジェクトを立ち上げた。
The Witcher 3のプロジェクトはコンソール(家庭用ゲーム機)で動作する新たなゲームエンジンを作るためという背景を持つプロジェクトだった。
この理由はBioware社のオーロラエンジン(前記事脚注参照)はコンソールで動作せず、CD Projektが目指していたコンソールという場所に近づくためだった。
計画ではThe Witcher 2の後、その新たなエンジンに乗り換える予定であった。
引き続き、オーロラエンジンで作られたThe Witcher 2の技術デモの出来は、アダムから言わせれば「素晴らしく見えた」。しかし、この情報は程なくリークされる。
その当時、この技術デモは唯一の成功だった。
何故なら、彼らを怒らせ、喘がせ、後にリリース計画も吹き飛んだとんでもなくクソなThe Witcher:Rise of the White Wolfの計画も一緒に進行していたからだ。
2.幻のタイトル、The Witcher: Rise of the White Wolf開発と波乱
The Witcher:Rise of the White Wolf(以下、White Wolf)はThe Witcherのコンソール版で、パブリッシャーのアタリによる提案だった。
マルチンは最初は不本意だったが、後々のコンソール進出のためにブランドを確立する必要があると踏んで了承した。
が、CD Projekt REDはWhite Wolfを開発する内部能力は無く、フランスのWidescreen Gamesに外注された。
5ヶ月後、フランスで問題が起き、これを助けるためにCD Projektは複数人の開発者を派遣した。
そこには、多くの問題があった。Widescreenの熱意はマイルストーン*2へ到達するために注がれていないのではないかとマルチンは疑った。
開発スタジオの危機を助けるためにアダムはフランスへと降り立った。
リヨンで行われるアタリの協議会へ出すために重要な、ゲームのVertical Slice*3を作る必要があったからだ。
そして、なんとか嵐は過ぎ去り、「ブラボー!」という歓声が上がった。
しかし、またもや2週間後に問題が発生する。Widescreenは4,5ヶ月延期したいと言い出したのだ。
マルチンはこう言う。「問題だったのはこれだけじゃない。電話での愚かな議論の全てが『お前が悪い』だとかそういう話なんだ。彼らにはどうやってゲームを作るかなんて考えがまるで無いことを僕たちは思い知ったね」
こうして、 ポーランドのCD Projekt REDより多くの金が毎月Widescreen Gamesに費やされた。
この状況は危機について協議する機会となり、悪い状況であるという評価が下された。
3.舌戦の果て -開発中止-
▲リヨンの街並み ABB at CIRED 2015 in Lyon new.abb.comより
晩のリヨンのカフェでおそらく5,6人が座っていた時のこと、彼らに「どう思う?」と聞いた。その答えはますます思い悩む方向へとなっていった。
「Widescreenはさらに30人必要になるだろう。しかもWhite Wolfを完成させるまでにもっと年月が必要になる」
そして、誰かが言った。
「おい! キャンセルして別のゲームを作ろうぜ! あいつらと仕事するよりよっぽど楽になるだろうよ!」
そして、目を細めた。
「明日、アタリにそのことを話して俺たちは手を引こう!」
アタリは幸せ者ではなかった。この話を聞きつけてフランスに降り立ったのは偉大なるPhil Harrison(フィル・ハリソン)*4その人に他ならなかった。彼はCD ProjektとWidescreen両方から話を聞くことにした。
マルチンは会議を覚えている。
「僕たちがテーブルの片側へ座って、反対側にWidescreen、そしてフィルが座っていた。そしてその最中、戦いは始まった。彼らは僕達を、僕たちは彼らを非難し始めた」
そして、恐ろしい様子のフィルがマルチンとミハルを呼び出し、言った。
「この会議はなんてクソなんだ!」
マルチンたちは「ええ、フィル。ごめんなさい、私たちが台無しにしました」と謝った。
マルチンはその時、一気に恥じた。たくさんの自分たちの金を浪費してしまったからだ。次にフィルと連絡が取れた時、フィルは言った。「本当に本当にすまなかった。しかし、私たちはあなた達に仲裁通知をしなければならない。そして、私たちがあなた達に払った分の金額を返済しなければならないことになるだろう。
マルチンはニューヨークへ飛び、交渉したが、結局はThe Witcher2を作る前に北米でのThe Witcher 2販売に関する契約書にサインした。
これはWhite Wolfに対する債務返済を目的としたものであるとアタリは宣言した。
2009年5月、CD Projekt REDはThe Witcher:Rise of the White Wolfの一時的な開発終了を確認した。しかし、実際にはゴミ箱に計画そのものを投げ捨てたようなものであった。
「僕たちは多くの時間を無駄にした」とマルチンは今でも嘆いている。
(ちなみに、Widescreen GamesはThe Witcher:Rise of the White Wolfの開発キャンセルに伴い解散した)
次回は最終回
第4回へ続く……
ソース
The wild road to The Witcher 3 | Develop
How the team behind The Witcher conquered Poland | Polygon
Seeing Red: The story of CD Projekt • Eurogamer.net
『ウィッチャー3 ワイルドハント』スタジオ・ヘッドにインタビュー、CD Projekt REDが贈る次回作はどうなる? - ファミ通.com
4Gamer.net ― ポーランド生まれのシングルRPG,「Witcher」の日本語化MODがメーカー公認へ
『ウィッチャー3』を日本に届けた男が今語るローカライズ理念―スパイク・チュンソフト本間覚氏インタビュー | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト
上記の中で一番詳しかったのがEurogamerの記事。これをベースに他サイトを参考にしながらまとめていきました。
凄く貴重なお話が、詳細に載っていますので是非Eurogamerの記事はご覧になってみてください。今の時代は拡張機能等で全文を機械翻訳出来ますので、気軽に読むことが出来ますよ。
※もしも誤訳があればお教え下さい。修正致します。
*1:The Witcherのバグ修正やサブシナリオ追加の配信パッチ
*2:マイルストーン―プロジェクトのスケジュールマネジメントにおける用語。スケジュール上の重要な節目節目のことを指す。例えば、いつまでにどの作業に手をつけ、仕上げるかなどである。
プロジェクトマネジメント入門 - 第7回 日程・予算・リスク計画を立てる:ITpro
*3:Vertical Slice(ヴァーティカル・スライス)―プロジェクトのスケジュールマネジメントにおける用語。主に海外で行われるゲーム開発行程の一つで、あるステージや章だけを完成品に近い形で作ってから、本格的な開発に入っていく。これによってスケジュールや予算、クオリティについて大体の目処がたてられる。
ゲームを作るときの流れ | Mask de Patrasche
*4:フィル・ハリソン―元ソニー・インタラクティブ・エンタテインメント制作部門副社長、プレイステーションを成功へと導く立役者。後に退社し、アタリの親会社であるインフォグラム・エンタテインメントの社長へ就任。2012年にはマイクロソフトへと入社し、任天堂以外のゲームハード会社を渡り歩いてきた人物。