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【ゲームレビュー】MAD MAXプレイ感想

どうも、TRYDERです。

どうしても、何クールもあるアニメとか観始めると更新が途絶えがちになりましてすみません。

 

さて、最近は本格的に暑く、クーラーが手放せませんね。

こんな時期は頭に熱気がこもらないように髪型もさっぱりさせたいものです。ベストは坊主です。なので坊主がたくさん登場するゲーム『MAD MAX』をプレイしました。

 

では、始まります。

 

ゲーム概要

ジャンル:カーアクションアドベンチャーオープンワールド

パブリッシャー:ワーナーブラザースインタラクティブエンタテインメント

デベロッパー:Avalanche Studios

プレイ人数:1人

 

筆者クリア時間:18時間

 

『ジャストコーズ』でお馴染みのアバランチスタジオ開発の本作は名作映画『マッドマックス』シリーズをゲーム化したもの。

 

主人公マックスの愛車「インターセプター」が奪われるところから始まり、道中出くわしたエンジニアの小男チャムバケットとともに愛車を取り戻しに行くというのがストーリーラインだ。時系列的には映画4作目『怒りのデス・ロード』前後もしくはその辺りのパラレルストーリーであると推察される。

 

本作は映画に登場するような冒涜的外見の車両同士の戦闘が特徴。今回はそんな本作が原作映画ファンまたはゲーマーに受け入れられるのかを紹介していきたいと思う。

 

 

印象的なゲーム導入

プレイ冒頭。核の炎で豊穣な大地が一変していく実写ムービーを背に滔々としたナレーションが生き残った者たちが壊れていく様を語る。実写ムービが終了すると暇もなくカーチェイス。草木が一切無い延々とした荒野に一本アスファルトの道路が伸び、その上を疾駆するお馴染みのインターセプターをスキンヘッドの男たちが錆び付いたジャンクカーを駆って追い立てる。

▲荒野の追走劇

スキンヘッドの男達に囲まれた主人公マックス。インターセプターが敵の手に落ち、マックスは敵のもとへ乗り込んでいく。敵の首領はまさしく狂気が跋扈する荒野を支配する風体。全裸に鉄製の肩パッドを革紐で留め置き、背には生首、腰にも生首、股下には悪趣味なコッドピースが鈍く光る。鼻からはチューブが伸び、歯はサメのように鋭い。敵の首領の名はスクロタス。

けたたましいエンジンを響かせ荒野を駆けるトラックの上で激しい肉弾戦が繰り広げられた末、マックスはスクロタスの頭にチェーンソーを突き立て、導入は終わる。

▲スクロタスとの迫真の肉弾戦

この導入はいくつもの工夫が凝らされていると感じた。実写ムービーパートはマッドマックスシリーズの中でも人気の高い『マッドマックス2』の導入を彷彿とさせるし、マックスの乗り物が奪われてから物語が動き出すのは『マッドマックス2』以降のお決まりだし、何よりも『マッドマックス怒りのデスロード』最大のボス、イモータンジョーの息子という設定のスクロタスが真っ先に殺されたのは衝撃的だ。

 

 

砂の海に浮かぶ儚げな鉄の島と彷徨い続ける主人公 ― マッドマックスという世界観

「ポストアポカリプス(文明崩壊後の世界)というジャンルにおいて絶大なイメージを植え付けたのがマッドマックス(とりわけマッドマックス2)である。人々が文明崩壊後と聞いて想像するのはマッドマックスのような世界観が多いだろう。無論、商業的に成功したために衆目に晒されたことが他作品より多いのが一番の要因であろうが。

さて、本作ではそんなイメージが再現されている。映画でも印象的な死が広がる荒野の黄土色とそれら一切が些事と思わせるかのような青空とのコントラスト、鉄に歴史を与え一種の有機性をも感じる程の大量の錆表現、この世界に生ける人々が人体というものに一切の価値や尊重も見出していないのだと感じさせる奇異な自傷装身具の数々、挙げだしたらキリが無い。

▲澄み渡る青空と死の荒野の対比

▲エモ・ファッションでも見ないような顔のピアス

これらは世界観を構成する一幕に過ぎなく、その舞台を彩るにあたっては家族を失った痛苦から永遠に荒野を彷徨う修羅と化した主人公マックスが欠かせない。映画同様、本作のストーリーラインもそんなマックスの苦悩が明確に描かれる。マックスにスキルを授けるキャラクター、グリッファとの会話は特に興味深い。

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▲マックスとの対話で深層意識を探っていく案内人。謎のウェイストランダー、グリッファ

荒廃した世界やマックスの苦悩という雰囲気作りだけではなく、映画ファンを惹きつけるための要素も存在している。例えば、4作目『マッドマックス 怒りのデスロード』の登場キャラ、人食い男爵が治めていたと設定されているガスタウンも主要舞台として登場するし、3作目の『マッドマックス/サンダードーム』で登場した決闘場サンダードームが、バータータウンは登場しないものの1ステージとして用意されている。小物にも注目すると、マックスがフィールド上で食べる缶詰も『マッドマックス2』で食していたディンキディの犬用缶詰だ。こういった映画ファンに向けた要素も特筆すべき特徴の一つである。

▲ガスタウン

▲ガスタウンのサンダードーム

 

 

命なきものへの執着 ― 車のカスタマイズ

命なきものへの執着とは作中内キャラクター、グリッファの弁。家族を失ったマックスは過去の幻影に苛まれながら、逃げるように走り続けている。過去が囁いてくるのを振りほどきたい一心は破壊衝動へと向かい、狂気に囚われたウォーボーイたちを持ち前の運転技術でひたすら狩る。プレイヤーはマックス自身である。マックスの逃避を手助けするためには車のカスタマイズは不可欠だ。

 

車のカスタマイズは18の項目ごとに行える。それぞれ最高速度を上げたり、耐久力を高めたり、ニトロブーストの回数を増やしたりといった具合に車自体の戦闘力を向上することが出来る。

▲18種のカスタマイズが可能

いよいよ荒野の無法者に立ち向かえるようになったら実戦。フィールド内では常時スクロタス勢力の車が巡回しているため、うっかり出くわすと戦闘に陥る。搭載されているハープーンを使って敵車両のタイヤを外すのも良し、装甲板を剥がして運転手を殺すのも良し、火炎放射器で火だるまにするのも良しだ。

▲爆炎入り乱れる荒野

この武装カーアクションというゲーム性はそれほど珍しいテーマでは無く『スパイハンター』や『twisted metal』、『full auto』等とりわけ海外において“vehicular combat games”として散見されるジャンル。従来の武装カーアクションでは一本道でひたすらぶつかり合ったりミサイルをぶっ放したりといった単調なプレイに終始しがちだが、本作ではバトルがオープンワールドで繰り広げられるので、映画で観られるような土煙と爆炎が入り乱れる車列とのカーチェイスという展開を体験出来るよう設計されている。

▲土煙たちこめる車列

個人的には武装カーアクションは遊び方が単調に成りがちであまり好みではないジャンルなのだが、本作のカーアクションは爆炎の再現や荒野の質感などが映画の雰囲気に近く非常に楽しめた。オープンワールドで際限無く走り続けられるというのも大きい。

 

ここまでの画像では一貫して「ジャック」という車体を用いているが、パーツの組み合わせによって車体も変更できる上、カスタマイズ不可という制約が付くものの敵のマシンを奪って乗り回すことも可能だ。

 

 

単調な戦闘とそれに伴う拠点攻略の苦痛さ ― 戦闘システムとオープンワールドのちぐはぐ

映画『マッドマックス』内でマックスは己の肉体を行使して死の荒野をサバイブしていくが、ゲームにおいても白兵戦の機会は多い。戦闘システムは同じくワーナーブラザーズがパブリッシングを行う『バットマンアーカム』シリーズに似たもので、ボタンを連打すると殴る蹴るのコンボを自動で行ってくれるというもの。とはいえ『バットマンアーカム』のようにガジェットが豊富なわけでは無く、はっきり言って非常に強い作業感を味わうこととなる。攻撃とカウンターを交互に入力するだけで大抵の敵は倒せる上、ボス戦においても攻撃モーションが同じの色違いコピーで面白味の欠片もない。

▲モデルの使い回しが目立つ。映画『マッドマックス』では印象的なボスが多いので尚更惜しい

マックスの白兵戦がゲーム内においてさしたる比重ではなかったらまだ良かったものの、本作ではがっつりゲーム攻略に絡んでくるのが困りものだ。というのも、車の上位強化パーツが解放される条件として、ある地域一帯の脅威レベルを減少するというものが大半を占めているのだが、この脅威レベルを下げるために必要なのが拠点攻略だ。

拠点攻略とは一般的なオープンワールドに見られるような要素と同じで、敵勢力が根城とする拠点を開放するというもの。退屈な白兵戦も相まって各地に配された拠点は嫌がらせのようにしか思えない。まさしく「(プレイヤーが)怒りのデス・ロード」だ。

▲広大なマップなだけに拠点解放が億劫

『ジャストコーズ』を作ったアバランチスタジオだけにオープンワールドに対して少々期待していたのだが、これでは拍子抜けである。これ以外にも面倒な仕様のミルフィーユは続く。『アサシンクリード』における“ビューポイント”と同じ役割の気球はその最たるものだ。上空に上がるまでボタンを押しっぱなしで30秒近く浪費し、上についたと思ったらプレイヤー自身が双眼鏡でロケーションを見つけなければならない。

ロケーションを見つけても脅威レベルを下げる『かかし』『ウエストランドスナイパー』ばかりであり、車で引き倒すだけのこれらのために面倒なプロセスを経なければならない。他にもわざわざ専用の車を持ってこないと処理できない『地雷原』や、マップの隙間を埋めるために配されたと邪推したくなるスクラップ(車を強化するためのゲーム内通貨)集めのスポットなどひたすら面倒である。

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▲一見、ロケーションが多いように見えるが殆どがスクラップ(車を強化するゲーム内通貨)拾いの場所である。

このように本作は他オープンワールドゲームから要素を劣化的に拝借しただけで、本作におけるオープンフィールドの存在意義は車で爆走するだけの舞台と言っても過言ではない。

 

 

キャラゲーとしてはハイクオリティ。オープンワールドゲームとしては疑問符 ― 総評

良い点

+原作の空気感を再現

+迫力のカーチェイス

悪い点

-作業感の強い戦闘

-退屈なやりこみ要素

-ゲーム進行のテンポの悪さ

 

映画に興味の無いゲーマーに対して、本作はあまりオススメ出来ない。確かに、カーチェイスアクションは一定の面白みはあるが、オープンワールドゲームとしての深みは薄い。上記の通り、オープンワールドゲームにおける面倒な要素をかき集めて粉挽き機にかけると本作の出来上がりである。また、街の作り込みも簡素なもので『マッドマックス/サンダードーム』のような荒野の原住民との交流もなければ、バータータウンのような街並みが再現されているわけでも無い。

 

ただし、重度の『マッドマックス』フリークにとっては一考の余地がある。原作映画の魅力を引き立たせることを意図して作られたのであればキャラゲーという概念が近いのではないかと思うが、その意味において本作は潤沢な資金で作られたリッチなキャラゲーであることは間違いない。映画内で見ることのできなかったガスタウンのイメージや、インターセプターを運転出来るだけで購入検討の価値は大いにあるだろう。