【ゲームレビュー】Farpoint感想
どうも、TRYDERです。
今回は前から気になっていたPSVRシューティングコントローラーを用いる初のVRソフト『Farpoint』のレビューを書きたいと思います。
『Farpoint』は宇宙ステーションがワームホールに飲み込まれ、未知の惑星へ漂着する場面から始まります。SF作品ではお馴染みの導入であり、惑星探査に繋がっていくストーリーもこれまた古典的と言ってよいストーリー展開。
ストーリーだけを見ると特筆すべきところはないように思えますが、本作の機微に触れるためには“VRシューティングコントローラー”という存在が欠かせません。そんなVRシューティングコントローラー初対応の注目作である本作を紹介していきたいと思います。
VRシューティングコントローラーを用いるか否か
主題の通り、VRシューティングコントローラーを用いるか否かで本作の評価は異なったものになるだろう。VRシューティングコントローラーを用いればアーケード顔負けのガンシューティングに変貌するし、用いなければ平凡なFPSに成り下がる。そのため、本作と密接な相関を持つVRシューティングコントローラーの紹介から入りたい。
VRシューティングコントローラー(北米:PS VR aim controller)とは『Farpoint』と同日発売(日本:6月22日、北米:5月16日)されたVR専用周辺機器である。
同じような周辺機器としてPlayStation®Move モーションコントローラが存在していたが、PS3用周辺機器として設計されたモーションコントローラにはアナログスティックが存在しておらず、右手・モーションコントローラ、左手・ナビゲーションコントローラーという煩わしさはガンシューティングには不向きな存在であった。
▲(画像左)モーションコントローラ、(画像右)ナビゲーションコントローラー
ところが、VRシューティングコントローラーはその名の通りVRガンシューティングに特化するように設計され、銃の基本動作をより実感できるようになっているとともに良好なトラッキングのお陰で銃の照準を覗き込んで射撃するという芸当も可能になっている。各種ボタン配置も工夫が見受けられ、直感的な操作が可能だ。
本作をプレイするにあたって、VRシューティングコントローラーの存在は大きい。いや、本作だけでなくVRソフト全体で入力装置という存在はマルチモーダル*1という概念に直結するため重要だ。Social VR Infoの記事内でも吉田修平氏(SIEワールドワイド・スタジオ プレジデント:ソニーゲーム部門の総責任者)が『グランツーリスモ』をハンドルコントローラーでプレイするとプレイフィールが大分異なるということを引き合いに出し、重要性を語っている。
ここまでPSVRシューティングコントローラーの利点を述べてきたが、少々煩わしさを感じる面もある。Farpointでは立ってでのプレイが想定されているが、ゲーマー諸君の体力事情を鑑みるに、椅子に座ってのプレイが多いだろう。その場合、Playstation Cameraのトラッキング範囲が他社VR製品より狭いため、トラッキング範囲外へ頻繁に出がちになるのだ。そのため、椅子を高くしたり、ゲーム内設定で再キャリブレーションしたり、ゲーム内設定でプレイヤーの身長を低くするなどの工夫が必要になる。そういった少々の煩わしさを除けば、素晴らしいデバイスだ。
ガンシューティングとしてのゲーム設計
本作のステージ設計は一本道であり、ひたすら進んで敵が登場したら一戦交えてまた進むといった具合だ。アーケードガンシューティングに見られる強制スクロール進行を3D空間に落とし込んだような印象を受けた。その証左に潔いほどにアイテムコレクトなどのやりこみ要素は一切廃されていたり、銃器も弾薬の制限無しに装填されていくことから本作がガンシューティングとして作られたことがひしひしと伝わってくる。UIと言えるUIは画面上に一切無く、強いて言えば腕のバンドに表示される現在時刻とHP表示、そして銃に表示される残弾数のみであり戦闘に集中出来る作りだ。
また、敵の種類もガンシューティングライク。すばしっこい小型、酸弾を放ってくる中型、装甲が分厚い大型、ボス戦に登場する超巨大型と複数おり、それぞれに適した武器を選択して戦う必要がある。敵の外見はグロデスクであり、飛びかかってくる敵に対して思わず身構え、本気で攻撃してしまう。
▲ボス戦に登場する巨大蜘蛛
ここまで、如何にガンシューティングライクな作りかを言及してきたが、本作ではガンシューティングには無かった前後移動の概念も組み合わさったことでより頭脳的で緊張感のあるゲームに昇華されている。障害物から頭を覗かせて狙撃に目障りなドローンを撃ち落とし、頭上から降ってくるミサイルをショットガンで迎撃して隙を見計らってスナイパーライフルでデカブツの弱点を狙撃、再び障害物に隠れてドローンの射撃から回避するといった動きが、秀逸な出来のVRシューティングコントローラーによって可能となっている。そんな歴戦兵士のような動きが出来たときの快感は一入だ。これまでのアーケードガンシューティングでも、FPSでも味わうことの出来なかった体験が待っていることは誰しもが認めるところであろう。
グラフィック
既に知られている通り、PSVRでの表現を完全な形で味わいたいのならばPS4proでのプレイは必須だ。残念ながら自分の場合、ノーマルのPS4でのプレイとなるので当然解像度が低い状態でのプレイとなる。解像度自体が低いためテクスチャについての言及等が出来ないのも留意して頂きたい。
まず言及したいのは景観だ。ゲーム全体を通して舞台となる荒野は映画『オデッセイ』に登場するような荒野であり、生気を全く感じない雰囲気作りは上手く出来ている。VRタイトルなだけに『Horizon Zero Dawn』のような環境表現にまでは程遠いが、下手に草などを配置するよりは無機物表現に限定することで惑星の過酷な環境と孤独感を一層引き立てる。一応、宇宙植物があるにはあるのだが、青魚の表面のようなてかりを持つイソギンチャクのようでなまじ有機物とは言い難い外見をしている。
▲火星のような景観が舞台
▲異星人の建造物も舞台となる
まず、ノーマルPS4では解像度が低い状態なのでステージ全体は若干のっぺりしている。遠方の描画も甘く、狙撃したい場面などであまり遠くの敵が判別出来ずに苦労した。4Gamer.net西川善司氏の記事によればPS4proだとフルHDよりも高い解像度で処理しているらしく、テクスチャ等のディティール表現が向上するようだ。であるが、そんなハンデを持つノーマルPS4でも没入感を得ることが出来るのはVRゴーグルとシューティングコントローラーの妙である。
今ひとつなストーリー
主人公達がワームホールに飲み込まれ漂着したのは未知の惑星。蜘蛛のような生命体が跋扈する無味乾燥な荒野に放り出された主人公が、同じくワームホールに飲み込まれた仲間を探して放浪するというのがメインのストーリーラインだ。クロスカッティングが用いられており、主人公が放浪しチェックポイントまで到達すると他の仲間のムービーパートに移行し、ストーリー進行とともに仲間たちの行く末が辿れるように構築されている。
▲主人公がホログラムを修復すると、場面転換が起こる
要はゲームプレイを通じて仲間たちの痕跡を辿っていくのだが、プレイヤーである主人公と仲間たちが交わることが無く、いちいちVRムービーを見させるほど重要な場面でもない。ただの状況説明としてしか機能していないのだ。こういった舞台装置のためだけの役割は他にも散見される。放射エネルギー、ワームホール、エイリアンなど関心を誘うワードは散りばめられているのに脚本上の存在感は皆無である。ただ、未知の惑星に落着するための理由付けに過ぎず、蜘蛛型生物やエイリアンなども敵を用意しただけに過ぎない。なぜエイリアンは文明を築かずあるポイントに基地を設けているだけなのか、ワームホールとはいったい何かなどゲーム内で提示される疑問を一切吹っ飛ばしている。
▲物語の鍵を握るワームホール。正体はよく分からない
このような説明不十分は感情移入させるには致命的である。例えば、終盤で仲間たちがワームホールに飲み込まれてしまう場面では、死んだのか別の惑星に飛ばされたのかよく分からず特に感情移入も出来ないまま進んでいく。結局、ここまでうだうだ言ってきたが、このゲームの楽しみ方は自分がキリングマシーンと化す喜びを噛みしめるということだ。ストーリーなんか些事なもので、自らの戦闘スキルが向上する様を精一杯楽しむのが吉である。
あくまでガンシューティング体験に特化した本作はボリュームも5時間強ほどでそんな多くない。カジュアルに楽しむのが正解と言えるだろう。このボリュームに対する賛否もあると思うが個人的にはVRコンテンツが身体にもたらす負担を考えるとこれぐらいが丁度良いのではないかと感じている。実際、プレイ後の疲労感は凄まじかったし、なにより目の疲労は尋常なものではなかった。
総評
ストーリーに目を見開くような点が見受けられない本作だが、VRシューティングコントローラーとの親和性は凄まじい。VRシューティングコントローラーでプレイするならば、ガンシューティングというジャンルの進化が見受けられる本作はプレイする価値のある一本と言えるだろう。Social VR Infoの吉田修平氏インタビュー記事を読めば分かるように今後もPSVRシューティングコントローラー対応のゲームを増やしていくとのこと。栄えあるシューティングコントローラー対応の一作目としてその別次元体験をしてみて欲しい。
*1:人間の知覚の組み合わせが錯覚を起こさせるという考え方。つまり、VRゴーグル(視覚)とVRシューティングコントローラー(触覚)が組み合わさればよりリアルに感じるということ。