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【感想・レビュー】LEFT ALIVE

どうも、TRYDERです。

 

今回は2月28日に発売した『LEFT ALIVE』について書いていきます。

LEFT ALIVE(レフト アライヴ) - PS4

 

取っつきにくいジャンル

本作はSRPGフロントミッションシリーズ」の世界観を流用したリブート作品であるが、ジャンルは全くの別物。また、独特なジャンルであり、鍋島氏はローグライクを目指したサバイバルアクションと述べている。実際、プレイするとその意味がよく分かる。このゲーム、巡回する兵士に忍びよっても俗に言うステルスキルは一切出来ない。銃で何とかしようとしても最初の頃は銃弾すら貴重な上、連射すると拡散し敵にまともに当たらず、敵もアーマーを着込んでいるため硬い。

 

つまり、ステルスアクションとしてもシューターとしても爽快な要素は何も無いのだ。このようにゲーム側があまりにもプレイヤーを接待しない上、芋くさいモーションとグラフィック。「アーマード・コア」の鍋島俊文、ロボットが得意なメカニックデザイナー柳瀬敬之、「MGS」の新川洋司、という布陣を見て心躍らせたロボットオタクやステルスゲームファンを叩き落とすという仕打ちから、ネット上では酷評が絶えない。だが、正直なところ自分は楽しんだ。その理由を述べていこう。

 

ずる賢く強引に攻略する醍醐味

チャプターはあるマップ上に設定された地点にたどり着けばクリアとなる。マップ上には敵兵や戦車、ヴァンツァーが巡回しており如何に突破するのかがこのゲームの味噌だ。前述の通り、敵は固い上に銃器は頼りなくリソースも限られるので強引な突破は難しい……と思うかもしれない。

 

しかし、段々と敵の特性が分かってくると強引な攻略が可能となってくる。ここからがこのゲームの真の醍醐味だ。

例えばドローン。よほど真正面に姿を晒さない限りこちらを察知しないし、1機や2機落とした程度で警戒度は上がらない。また察知の度合いは敵兵も同様で、軽い銃声や爆発音がしてもそこにプレイヤーの姿が無かったら警戒を解いてしまう。また、姿が見つかって警戒状態に入っても、AIはお粗末なので執拗に追ってこない。よって全力でローリング移動して逃げれば大抵なんとかなる。

 

発煙瓶で敵を集めて煙の中でスライディングし、鉄パイプでダウン攻撃。敵の背後に忍び寄ってリモート地雷をそっと設置して起爆。スライディングで敵をこけさせ、敵がダウンしている間に強引にローリングで包囲を突破する。攻略方法は様々だ。

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▲スライディング→ダウン攻撃は基本スキル。敵を迅速に排除でき、近接武器の耐久値損耗も最小限で済む。

 

更に中盤以降になると、巨大ロボである「ヴァンツァー」とスナイパー・ロケットランチャー・ガトリングといった3種の「特殊武器」がマップ上に配置されるようになる。これらを手に入れれば逃げ隠れする必要はない。「ヴァンツァー」ならぶっ放しながら目標のエリアに辿り着けばクリア。「特殊武器」なら道中の要所にいる敵を遠距離から排除すれば楽にクリア出来る。

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▲ヴァンツァーに搭乗すればクリアも同然

 

このように図ったのか図らずなのかは分からないが、敵のAIや挙動がガバいという穴が意外と面白い効用を生んでいる。数多くのゲームが存在する中でこのようなパターンは珍しいかもしれない。

 

難易度を上げる生存者という存在

正直、本作は“クリアするだけ”なら難易度は高くない。「生存者」という要素を加味すると話は別だ。

「生存者」とは戦火の街で逃げ遅れた民間人のことで、この「生存者」を無事シェルターまで逃がすとサブクエスト達成となる。ただ、「生存者」を生きてシェルターへ送ることは難しい。「生存者」がシェルターにたどり着くルートは定められており、入念にルート上の敵をプレイヤーが排除して上げる必要があるからだ。

 

ここまでして得られるものは何もない。昨今のゲームとしては何らかのリワード(報酬)があるのが普通だが、鍋島氏はあえてそこを省くことでエモーショナルな選択肢の一つとしたのだという*1。また、鍋島氏は「それを前提にしてゲームバランスを調整することになるので、結果的にそのプレイを強制するゲームになってしまう。誰も助けないプレイヤーが不利になるというのは、本作の目指すべき形と違います(後略)*2」と述べている。

 

ただ、個人的にはそこに異を唱えたい。実は「生存者」は助けた人数がエンディングのグッドバッドに関わってくる。本作は強いシナリオベースのもとゲームが進行していくことを鑑みると、もしもプレイヤーが酷なリソース管理を強いた末にバッドエンドに終わってしまうことを考えると、そこにゲームに対する印象の差は出てしまうのではないかと思うのだ。

 

リブートに対する意識の違い

近年、カプコンによるリブート作がゲーム業界に旋風を読んでいる。『モンスターハンター:ワールド』『バイオハザード7』『バイオハザードRE:2』といったタイトルがその顕著な例だ。

 

その反面、今回の『LEFT ALIVE』はお世辞にもリブートが成功したとは言えない。両社のどこに差があったのか。やはり「スクウェア・エニックス」という企業が「フロントミッション」にかけるIPに対する熱意と期待値が低かったと邪推せざるを得ない。今日日、ゲームを売ろうとしたらなかなかこういうゲームデザインは見られない。自分はむしろ第7世代(PS3Xbox360)初期作のような懐かしさまで感じてしまった。


また、プレイして数分で分かるほどにモーションやエフェクトは陳腐だ。同じスクウェア・エニックスでも「FF15」で魔法や召喚獣が現れた際のエフェクトとは雲泥の差がある。はっきり言って低予算だったのだろう。実際、鍋島氏も「キャラもロボットも作りこむというのは開発規模的に厳しく(後略)*3」と述べていることからも分かる。

 

低予算が故にモブのモデリング使い回し、マップを使い回しも目立つ。同じマップでリプレイさせても不自然にならないよう複数のキャラクターによる群像劇方式を採用し、涙ぐましい努力は感じられる。

ただ、AAA作品が溢れる時代。同じようなマップでスライディングしてパイプでぶん殴る暇があったら、他のゲームで遊ぶ人がいるのは否定し難い。更には「フロントミッション」の世界観でゲームを作るならば、「フロントミッション」の主役は「ヴァンツァー」なのだからここの作り込みを疎かにしてほしくなかった。

 

総評

本作は世間で言われている程のいわゆる“クソゲー”ではない。

敵に相対した際、「如何にずる賢く突破してやろうか」と思考する楽しさは確実にあるし、厳しい手持ちリソースの中でなんとかして敵の包囲突破出来たときの達成感は大きい。

ただ、手頃な爽快さを求めがちな今のゲーマーにとって敬遠されがちな上、低予算ゆえに生じたあらゆる粗がその不評を加速させてしまっているのは残念。

オススメし辛いゲームではあるが、これほど酷評されるべきゲームではないのも確かだ。