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【感想・レビュー】ANTHEM(PS4版)

どうも、TRYDERです。

 

今回は2019年2月22日発売の『ANTHEM(PS4版)』の感想を書いていきます。

Anthem(アンセム) (特典なし) - PS4

 

『ANTHEM』は『DESTINY』や『DIVISION』のようにハック&スラッシュメカニクスを持ち、ソーシャルなオープンワールド上で協力して敵を倒していく俗に言うシェアードワールドシューターだ。

【PS4】Destinyディビジョン - PS4

シェアードワールドシューターとして分類される『DESTINY』『DIVISION』

プレイヤーはジャベリンと呼ばれるパワードスーツを身に纏って戦う。ジャベリンには近接特化型・重武装型・状態付与特化型・オールラウンダー型の4種類があり、これらが一種のロールとして機能するようにデザインされている。

 

 

他に類を見ない“シェアードワールド”の広さ 

シェアードワールドとは前述したとおり、オンラインプレイヤーが行動できるソーシャル上のプレイエリアのことだ。『ANTHEM』はこの部分が他タイトルと比して圧倒的だ。

そびえ立つ崖の上から平原へ。平原に流れる川の先は滝となっており、滝の下の水辺には更なる水中世界が…というように縦横にわたり世界が圧倒的に広く、ファンタジーにありがちな巨大樹や古代のアーキテクトが転がる地形も豊かな本作のフィールドは好奇心を誘われる。この広大さこそが、ジャベリンに高機動を余すことなく発揮できる空間を与え、スピード感を生む要因の一つでもある。

 

反面、広大さが仇となりロードがやたらと長い問題が発生する点はネック。パスタのアルデンテは軽く作れそうなロード時間は重大な欠点だ。美麗で広大な世界とロード時間というパラドックス的なゲームとなってしまっているのは残念な点だろう。

 

戦闘の新鮮さ

戦闘に関しての新鮮さは特筆すべきものだ。特に滞空時間が長い点が、前述の縦横に広いプレイフィールドと噛み合っている。上空へのポジション取りという部分が新たな駆け引きを生んでいるのも面白い。

例えば、上空にポジション取りをすると、障害物をほぼ無視して広い範囲に攻撃出来る反面、敵の集中砲火を食らう。そのため、素早い回避アクションやブーストを使っての移動でポジションを取り直すというプレイが、スピーディーに展開されるのは新しい。

 

また、選んだジャベリンによって最適な位置取りやプレイスタイルが変わるのもシェアードワールドのタイトルとしては斬新だ。それだけにジャベリンが4種のみというのは少なすぎるし、惜しく感じる部分でもある。どうせなら、ロール(役割)という概念を捨て去って『WARFRAME』のように様々なプレイスタイルを持つジャベリンを登場させて欲しかった。

 

ビルドの楽しさ

ハック&スラッシュを行う武器・装備品が多いのも特徴の一つ。武器は勿論、ジャベリンの使用するアビリティが変化する「ギア」や、ジャベリン自体の性能が変化する「MOD」といった装備品が存在し、これらのシナジーを念頭においた組み合わせを考慮するプロセスがまた楽しい。例えばストームの場合、「エレメンタル強化」「属性導体」「属性シナジー」のプラグインでアビリティの回転率と威力を高めるギア特化ビルドが作れる。こういった敵や場面に合わせたビルドを練られるのも魅力の一つだ。

 

また、武器自体にも個別アビリティが付与されているのも面白い。ランダム付与効果であることから、高難易度ミッション周回に動機が生まれる。ただし、ドロップ率に何がありお目当てのスキルを持つ武器を手に入れるのは至難の業。パッチで修正される予定なので今後に期待したい。

 

不安定なゲーム動作がネック

上記したようなエキサイティングな部分はあるものの、問題点もまた多い。
まず致命的なのが、エラーが多いという点。この点はコミュニティの多くが指摘するところであり、症状は個人差かもしれないが自分の場合、一度エラーが発生するとゲームを再起動しなければサーバーに接続出来ない状態に陥った。
また、プレイ中にサーバーがシャットダウンしたとアナウンスが出て再起動してみると、普通にサーバーへアクセスすることが出来たり、オンライン周りの動作が非常に不安定なのである。

 

加えて、フリーズも多い。美麗で広大なフィールドを持つ本作だが、それ故にロードするオブジェクトが多すぎて安定性に欠けるのではないだろうか。また、この「ロードするオブジェクトが多い」という弱点はロード時間にも直結している。本作はミッション開始時に1分近くの非常に長いロードを挟む。PS4Proでこの状態なのだからノーマルPS4ユーザーのフラストレーションは想像に難くない。
何よりオープンベータの時点で指摘されていたこれらが製品版で改善していないのは残念だ。

 

あまりにクラッシュが多い本作についての返金対応が始まったという報道を、記事執筆中に目にした。シェアードワールドタイトルを作るなら安定性が大事なのは当たり前なうえ、実機で数時間遊べば判明する欠点をなぜ改善しなかったのか疑問が残る。

 

キチンとデザインされていない役割(ロール)

上記した通り、本作には4種類のジャベリンが存在する。手数の多い近接攻撃と敵を翻弄する機動力を持つ「インターセプター」。動きは鈍重なものの高火力な火炎放射器やランチャーを持った「コロッサス」。他ジャベリンと比べて長く滞空でき、広範囲の敵に状態異常を付与できる「ストーム」。特筆すべき特徴は無いもののどのミッションでも対応出来る万能型の「レンジャー」。

 

これらのジャベリンで互いの欠点を補って攻略していくデザインが為されたことはBiowareのインタビューを見るとわかる。ただし、狙い通りのゲームプレイになっているかどうかは疑問符が残る。
例えば、高難易度ミッションになると敵の耐久力・攻撃力は高くなる。この場合、敵に接近することを迫られる「インターセプター」の出番は無い。高難易度ミッションでの「インターセプター」の役割は“デバステーター”という爆発弾を撃てるスナイパーを持って遠距離から戦うというものだ。
また、「レンジャー」の性能も中途半端なものだ。何かに特化したアビリティも持たず、銃を撃ちながら合間でグレネードやシールドを出す程度が関の山。それならば他のジャベリンを使った方が攻略も楽だ。

 

反対に「ストーム」は過剰な性能だ。状態異常を付与された敵に大ダメージを与えるコンボ攻撃を自己完結で繰り出せられるほか、広範囲の敵に常時アビリティを繰りだせる点が非常に強い。MODやギヤでアビリティの回転率を高め、上空から凍結のアビリティをばら撒いて、炎のアビリティでコンボ攻撃を繰りだせば広範囲の敵を一掃出来る。
「コロッサス」も遠方から高火力の範囲攻撃を繰りだすことができ、また敵の攻撃を受け止めるシールドを持っているという点で、タンク兼攻撃役としての役割が強力だ。

 

このように役割分担が曖昧な現状、ジャベリンの変化はロールに直結するわけではなく、プレイスタイルを変化させる要素と捉えるのが妥当だろう。

 

魅力の薄い拠点

拠点である「フォート・タルシス」には様々な人々が暮らしている。NPCとの出会いはゲーム世界にリアリティをもたらす上で重要な要素だ。だが、本作ではその魅力が薄い。

 

例えば、NPCと話していると選択肢が現れる。好ましい選択肢を選べば、プレイヤーに対する羨望ゲージのようなものが微増するだけだ。

また、時に困りごとを抱えるNPCからミッションを請け負うこともあるだろう。ただ、その内容に関してはいわゆる“お使い”そのもので、敵を倒すかオブジェクトを防衛するかであり、代わり映えしない。クリアしたところで感謝の言葉が一言二言かけられ終了する。

こういった無味乾燥なミッションが続くうえに、達成したところで大した変化もないのことで、フォート・タルシスを守護するプレイヤーという存在が希薄になってしまっている。また、ストーリー開始直後から固有名詞で会話が繰り広げられるのも正直キツい部分と言える。

 

ただでさえNPCとの会話やミッションに面白味を感じないのに、それなりの広さを持つ拠点内をノロノロとした速度でしか散策できないのもまた、イライラを加速させる要因の一つだろう。ジャベリン関係のカスタマイズに要する店などは出撃地点の周囲に一まとまりになっているのがまだ救いである。

 

総評

海外の大手レビューでは酷評されがちな本作。ただ、つまらない一作ではない。

確かに舞台背景やストーリーはただの雰囲気作りに留まっているだけかもしれないが、その欠点を補うほどに広大な世界は好奇心を誘う出来だし、ジャベリンのスピーディーな戦闘はエキサイティングだ。

それだけに、動作の不安定さやバランス調整、ジャベリンに関するデザインを怠ったように見えてしまうのは残念。MMOチックなコンセプトであるシェアードワールドシューターは初動が集客に直結するためその失望感は尚更だ。

しかし、昨今は『No Man’s Sky』『SWBF2』のようにゲーム発売後のパッチで欠点が修正されていく時代。多分なポテンシャルを秘めた『ANTHEM』のさらなる躍進に期待したい。