TRYDERの一週一雑

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QTEの変遷と効用をふりかえる

どうも、TRYDERです。 

 

クアンティックドリームは2018年5月25日、最新作『Detroit Become Human』を発売しました。

【PS4】Detroit: Become Human

同社製のゲームはナラティブ重視の分岐シナリオ、映画的カットムービー、QTEを採用している特徴を持ちます。今回はQTEに着目。改めてQTEの変遷と効用をおさらいしていきましょう。 

 

QTE(Quick Time Event)は突発的にコマンド入力が発生するイベントのことで、『シェンムー』デザイナー、鈴木裕が生み出した単語だ。QTEは一般的にゲーマーの間では嫌われがち。例えば『CoD:AW』内の葬式シーンで発生した“Press F to Pay Respects(Fを押して敬意を払う)”というコマンド要求は、後にミームとなったほどだ。

▲列席者がすすり泣く中、礼装に身を包んだ軍人達が悼む荘厳な雰囲気の葬式。唐突に「Fを押して敬意を払う」というコマンドが表示され、そのミスマッチ感は笑いを誘った。―(Crowbcat氏の動画

 

また、『Press X to not die(死なないためにXを押せ)』はQTEを面白おかしく取り上げた有名なインディーゲーム。内容は「QTEに適応出来なかった非ゲーマーの襲撃から、QTEで逃げ続ける」というB級メタフィクションだ。

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▲事件の元凶は米軍が極秘裏に開発したドラッグ。「人々にボタン操作のような単純動作で複雑な動きをさせる」目的で生み出されたのだという……

登場人物が「まるでナイト・シャマラン映画のような状況だ」と言えば、選択肢が「1.ヴィレッジのような? 2.シックスセンスのような?」と現れたり、クスっとしてしまうメタギャグに溢れた内容なのだが、実はQTEの真理をついている。その理由をQTEの変遷を見ながら考えてみよう。

 

QTEの変遷

LDゲーム時代

QTEの歴史を遡ればLD(レーザーディスク)ゲームに辿り着く。日本では1981年に製品化されたLDは、約2時間の映像を収録できる光学ディスクであった。当時としては破格の高画質映像を記録でき、実写映像を利用した『マッドドッグマックリー(1990)』やアニメ映像を利用した『タイムギャル(1985)』『忍者ハヤテ(1984)』などが有名。

▲『マッドドッグマックリー(PS3版)』Omega Primus氏の動画

▲『タイムギャルWorld of Longplay氏の動画

LDゲームは入力の成否に合わせて、映像を切り替えている。『マッドドッグマックリー』のようなガンシューティングに見えるゲームでも、敵を倒すと不自然に映像が一旦途切れる様子が分かる。

完成済みのムービーをゲームとして成立させる場合、表現方法が限られるものだ。最近では『Her Story』のようなムービーアドベンチャーも登場しているが、当時はQTEのような「突発のコマンド入力」や「選択分岐式」が一般的だった。

 

現代的QTEの出発点

技術制約上の消極的なQTEから、ゲームデザインとしてのQTEへ変わったものとして代表的なのは『ダイナマイト刑事(1996)』だ。ベルトスクロールアクションQTEミックス。ステージ移動時にQTEが挿入され、成功すると戦闘をスキップ出来た。イベントスキップというリワードと緊張感をQTEに与えた。

▲『ダイナマイト刑事(英題:Die Hard Arcade)』Game Archive氏の動画

次いで現代水準の型を与えたのが『シェンムー(1999)』。上述した通り、QTEという言葉の産みの親だ。

不良に絡まれての決闘や逃走劇の場面になるとQTEが発生する。横須賀でのライフシミュのような静的ゲームプレイから一転、QTEを入れることで緊迫感が生まれる。ゲームプレイのギャップを利用した斬新なシステムであり、逃走劇・決闘で用いられるというシーンチョイスも含め現代的なQTEの始祖だ。

▲『シェンムーQTEシーン集 Shenmue Fans氏の動画

 

QTE氾濫期

PS2登場以降、QTEはアクションゲームのイベントシーンを中心に用いられ始める。

バイオハザード4』『ベヨネッタ』『GOD OF WAR』『バットマンアーカムビギンズ』『Untildawn』『ウォーキングデッド』『ソニックフォース』……2000年代初頭から現代までQTEを採用したタイトルの数はキリがない。だが、思えば2010年頃までがQTEのメインストリーム期だったように思う。

▲『バイオハザード4(英題:Resident Evil 4)』死亡シーン集 GameOverContinue氏の動画

当時、多用された理由として3点考えられる。

1つ目はLDゲーム期と同じように、グラフィックの進化で多用されたムービーシーンを、ゲームとして成立させようとした点。2つ目はムービー内にQTEを入れることでゲームプレイ中の緊張感を持続させようと試みた点。3つ目は演出幅が広がったことにより、ダイナミックな絵作りするために操作外のアクションをさせようとした点だ。

 

QTEが増えるに従って、ゲーマーからの否定的な見方も増えた。ゲームのメインデザインとは関係の薄いコマンド入力が突発的に発生し、失敗するとゲームオーバーになってしまう仕様が、プレイヤーに理不尽感を与えたからだ。

 

クアンティック・ドリームメソッドの出現 

クアンティック・ドリームはゲームにフェイスモーションキャプチャを取り入れた最初期のデベロッパーで、実際にハリウッド映画の請負いも行っている。高いグラフィック制作能力を持ち、制作するゲームもカットを意識したムービーシーンを多用した映画的なゲームを作る会社で有名だ。

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▲いまでこそ表情のトレースは当然の技術となっているが、当時はロックスターの『LAノワール』かクアンティック・ドリームの『HEAVY RAIN』くらいだった。『LAノワール』が顔と体のキャプチャーを別々に行っていた一方、『HEAVY RAIN』は全身をキャプチャーしていた点で一歩勝っていた。(ソース

ムービーにQTEは付き物だが、同社はQTEを違った形でゲーム内に取り入れた。それはゲーム全編にわたって些細なシーンでもコマンドを要求し、緊迫したシーンでQTEを挿入するというもの。何かとコマンド入力を要求することで、QTEに抱きがちであったゲームデザインとの乖離や突発性に対する理不尽さが緩和された。要はコマンド入力を慣れさせるデザインである。

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▲『HEAVY RAIN-心の軋むとき-』の1シーン。髪を崩したり、胸をはだけさせたりといった一つ一つの所作にまでコマンドを求める。

さらには、QTEを失敗してもゲームオーバーにならず、その失敗をも選択肢として取り入れてキャラクターの末路に関連させていく。失敗する度に操作キャラクターが窮地に陥っていくことで、視覚的に不利になっていると訴えかける。コマンドと映像のシンクロ性は、より切迫感を生んだ。

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QTEに失敗すると死ぬシーンもあるが、死亡した状態でストーリーは進行していく。ゲームオーバーではない、QTEを選択肢としての役割を与えた。

クアンティック・ドリームのCEOであり、同社がリリースする作品の監督兼脚本を行うデヴィッド・ケイジ曰く、同社のQTEは次世代QTEなのだという。上述のとおり、ゲームデザインとの齟齬、突発性に起因する理不尽さを極力まで排除することに努めた点は確かに次世代と言える。しかし、クアンティック・ドリーム作品への評につきものな“QTEへの言及”から分かる通り、QTEへの不満を払拭するまでには至っていない。

 

結論:QTEはなぜ嫌われものなのか

QTEの問題点はメインのゲームデザインと著しく乖離したシステムでゲームオーバーになる点だ。ゲーム内で習得してきた技術と関係ない部分を、しかも唐突に要求されるのだから無理もない。

 

さらには、QTE演出が必ずしも効果的ではないという問題点もある。アクションを見せたいはずが、プレイヤーはコマンドに集中をしてしまい物語への没入が削がれてしまう。しかも、表示されたボタンを押すだけという、ゲームとしては一次的な、原点的過ぎる遊びは今の時代では受け入れ難い

 

下手なQTEは、映像をゲームとして成り立たせたいクリエイターのエゴになりかねない。物語への没入を削ぎ、ゲームデザインの齟齬を産み、プレイヤーが反応できなければ反感を生む。ならばとクアンティック・ドリームは全編を通してコマンド入力を要求するデザインを行ったが、新作が出る度に評論家からはQTEへの不満が漏れ聞こえる。

 

このような認識がゲーマー間で共有された結果、生まれたのが冒頭で紹介した『Press X to not die』。非ゲーマーが狂暴化した元凶である米軍のドラッグが生み出された理由は、正にQTEが多用される一因であるし、しょうもない場面でQTEが連発するのも映像をゲーム化しようとした故の結果である。QTEはなかなか生かすのが難しいシステムなのだ。