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TRYDERの一週一雑

一週間に一度の更新を目指す雑記。自分が堪能したコンテンツを記す備忘録的なアレ

ドキュメンタリームービー 『BRANCHING PATHS』感想―国内インディーズゲームの現状を見た

あいさつ

皆さんはインディーズという言葉をご存知でしょうか。

インディーとは個人またはごく小規模で作られるいわゆる同人ゲームのようなもの。それに複数形のsがついてインディーズです。

 

海外でのインディーズは、今一番のトレンドと言ってもいいほど盛り上がっているジャンルの一つですが、日本のインディーズというと実感も実情も代表的なゲームも思い当たりません。

 

今回はそんな日本におけるインディーズの現状を追う「BRANCHING PATHS」というドキュメンタリームービーを紹介したいと思います。

 

playism.jp

インディーズのあり方

このムービーを観て、僕自身のインディーズに関する考えは変えざるを得ないと感じました。

 

僕は今までインディーズは大手への通過点と思っていて、この感性を大手が吸い上げることでもっと既存のゲーム会社がクリエイティブになればいいと考えていました。

 

しかし、そうではありませんでした。

 

インディーズや同人はあくまで“自分の好きなものを好きなように作る”ことが彼らのクリエイティブな感性を刺激していたのです。

 

組織に入ってしまうとガチガチに周りを固められますし、例え面白いことを思いついてもそれを手放す場面が出てきます。この手放すという言葉には二つの意味を包含していて、組織に固められて身動き出来ない不自由さと、自分の作ったゲームの権利が会社に帰属してしまうということを指しています。

 

そんな状況から会社を飛び出したことで有名なのは、このムービーでも出てくる五十嵐孝司*1氏と稲船敬二*2氏でしょう。

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BRANCHING PATHSより (左)五十嵐孝司氏、(右)稲船敬二

 

特に五十嵐氏が飛び出した理由として、コナミソーシャルゲームに配属されて以降、五十嵐氏のゲームが一本も出ず、ファンの声に応えたいという思いが強くなったことや先行してKickstarterで成功していた稲船氏を見たことを述べています。

 

こうしてインディーズに身を投じた五十嵐氏はKickstarterで自身のゲーム、Bloodstained: Ritual of the Nightの資金を募ります。その結果、Kickstarter最も資金を集めたタイトルになりました。

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Bloodstained: Ritual of the Night by Koji Igarashi — Kickstarterより

 

そんな五十嵐氏は自分の立ち位置に悩むと言っています。

お客さんの求めることを考えながらものを作っていくことが本当にインディーなんだろうかなというのがあって、その時にどっちなのかということが分からなくなります。

BRANCHING PATHS内インタビューより

 

また、五十嵐氏は「インディーで頑張っている人に対して、僕がインディーを名乗るのはとても、なんかごめんなさいと思っている」とも述べており、その根底には自身のコナミ時代に築いたネームバリューと固定ファンが既に存在していることに対する引け目があるのかもしれません。

 

このように、大手から抜ける人もいれば個人でコツコツ作る人もいます。

自分の好きなものを好きなように作ることこそが多様なクリエイティブ環境を産み、その結果、ファンコミュニティが形成されて、触発されて、一次創作や二次創作が生まれる。そんな循環がインディーズの魅力であり、正しいあり方なのだなと感じました。

 

日本でのインディーズの広がり

日本のインディーズはようやくゲーマーに認知され始めました。

しかし、認知に向けた努力に多大な貢献を果たしたのは意外にも外国人でした。

 

80年、90年代のゲーム業界は日本が牽引していたのに対して、今ではその栄光は影も形もありません。市場規模も縮小し、日本のコンシューマーゲームは死んだとまで言われている状況で海外はもはや日本を見捨てていくのだろうなと思っていました。

 

しかし、現在では昔のゲームに思いを馳せる外国人が日本で活動し、インディーズを支援していることをご存知でしょうか。

僕もこのムービーで初めてその事実を知りました。そして、こんなにも外国人が日本で会社を持っていることに驚いています。

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BRANCHING PATHSより 一部抜粋

彼らは日本のインディーズが停滞していることについて、一様にこう言います。“日本ではインディーズで成功することは難しいと考えられている。また、交流する場が無いために刺激も無ければ横の繋がりも無い、そこで知り合うことも出来ない”と。

 

これらを解決しようと動いているのはかつての日本のゲームに魅了された外国人達なのです。

 

彼らは日本のインディーズが面白いことを知っており、それを海外でも流行らせることが日本のインディーズが認められる第一歩だと述べています。

 

そのために、数々のインディーズの交流イベントやゲームショーなどを開催したり、steamやPLAYISMで販売するにあたっての言語面でのサポートやノウハウの提供、敷居が高そうなクラウドファンディングの利用をサポートするなど日本のインディーズを陰で支えています

 

その甲斐あって、数年前には日本にはインディーズが存在しないと考えられていた海外の認識が変わってきました。日本でもゲーマー達に認識されるようになってきました。

 

日本のインディーズが外国人のサポートによって開花しつつあることを留意して置かなければなりません。

 

インディーズの未来

これについて、BRANCHING PATHS内でクリス・コーラー氏が核心をついたことを述べています。

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プラットフォーム会社はインディーズを盛り上げるために持続的な支援が必要不可欠としており、その理由として、中小企業がゲームから撤退しつつある今、ゲームを盛り上げる存在は大手とインディーズのみであり、面白いソフトが存在しなければハードも売れなくなることを挙げています。

 

特に日本では国内インディーズから数本名作が生まれれば、海外に認められることとなるでしょう。今はインディーズの環境が整いつつある段階ですが、ここ数年でインディーズから成功者が現れるというのも夢ではないかもしれません。

 

BRANCHING PATHS内ではもっぴん氏制作のゲーム「Downwell」がリリースされるや否や各レビューサイトで満点を受賞する様子が収められています。

 

www.youtube.com

このことは、「国内インディーズから数本名作が生まれれば、海外に認められる」という先駆けを意味しており、国内インディーズの未来が明るいことを示唆しています。

 

僕自身、国内インディーズを注視したいと思います。

 

最後に

このドキュメンタリームービーに登場したクリエイターからは熱い想いをひしひしと感じました。日本のインディーズの将来は必ず明るいものになるでしょう。

 

また、ムービー内に出てくるゲームが非常に面白そうで、そんなゲームを知る機会が今まで無かったということはやっぱりインディーズ特有の「宣伝」という問題が存在していることも実感出来ました。

 

2時間ずっとインディーズという濃い内容ですし、疑問に思ったこともクリエイターが答えてくれるような構成になっています。これはディレクターのアン・フェレロ氏の力も多分にあるでしょう。

 

映像美という観点からも良いドキュメンタリーになっていますので是非、一度購入して観てはいかがでしょうか。

 

BRANCHING PATHS ¥980

playism.jp

 

 

*1:五十嵐孝司―ArtPlay代表取締役。元コナミ社員で悪魔城ドラキュラキャッスルヴァニア等のゲームのプロデューサーとして特に有名。IGAと名乗っている。インディーズにおいての活動はBloodstaindの資金をクラウドファンディングに集め、現在開発中。

*2:稲船敬二―comcept及びintercept代表取締役。元カプコン社員でロックマンシリーズやバイオハザード2、ロストプラネット等のプロデューサーとして特に有名。インディーズにおいての活動はMighty No.9の資金をクラウドファンディングで集めリリースした。