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TRYDERの一週一雑

一週間に一度の更新を目指す雑記。自分が堪能したコンテンツを記す備忘録的なアレ

映画『シン・ゴジラ』 感想・レビュー

あいさつ

どうも、TRYDERです。

 

7/29公開の映画「シン・ゴジラ」を観てきました。

 

公開までほぼ全てがヴェールに包まれていたこの映画。一般向け試写会も行わず、徹底的に秘密にし、パンフレットもこんな帯を付ける程でした。

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総監督は「ふしぎの海のナディア」「トップをねらえ!」「新世紀エヴァンゲリオン」「彼氏彼女の事情」などでお馴染みの庵野秀明

 

監督自身、数々の特撮作品に影響を受けており作中の随所にそのリスペクトが伺えます。

 

今回、そんな監督が手がけた12年ぶりの国産ゴジラはどんな出来だったのでしょうか。

 

感想や映画の特徴を書いていきたいと思います。

 

所感・作品紹介

僕はゴジラシリーズを見たことなかったので、特撮が肌に合うのか不安でした……

結論から言うとあまりの傑作さから初日に2回キメてきまして、次の日には初代ゴジラ1984年版ゴジラも見ていました……

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先入観も予備知識もなしに見た方が絶対に絶対に絶対に面白いので、もうこの先読まないで映画館に行って欲しいレベルです。

 

それでも、足が動かない方は、この感想の項目だけ読んで映画館に行ってください。

それでも、足が動かない方は、ネタバレを若干含んでしまいますが特徴の項目を見て行ってください。

それでも、足が動かない方は、いい加減足を動かしてください。

 

さて、本作は結構幅広い層が見に来ていて、それこそ子供から老人、外国人までいました。

 

シン・ゴジラでは巨大不明生物という災害に対処する政府の官僚や役人の活躍を主として描かれているため、結果として会話が多いです。

しかも政治上の専門用語が飛び交うために、親御さんが子供に状況を説明している姿が見られました。

また、ゴジラファンと思われる外国人も途中から寝ており、ゴジラとの戦闘シーンでパッと目を覚ましていました。

 

なので、人によっては「政治的で退屈な会話劇」という意見があるかもしれません。寧ろ、海外ではそのような意見が多数なようです。

kotaku.com

 

しかし、そういった声は気にする必要はありません。シン・ゴジラはとことん日本人に対して作られており、専門用語の応酬が耳心地よくなってきます。

 

日本特有の官僚機構の連携で関係各所と調整し、対策会議を行う様子が映画の大部分を占めます。決してハリウッド映画のようなヒロイスティックな主人公らによる個人プレーは見られません

 

東日本大震災や戦後日本が抱えてきた問題の当事者である日本人が面白さを感じる所以がここにあるでしょう。

 

庵野監督特有の明朝体テロップも人物に兵器に地名に、あれやこれやにバンバン表示され、読む暇もありません。それはドキュメンタリーチックな演出の一助となっており、徹底的なリアルを追求した庵野監督の狙いと見事一致していたように感じました。

 

 

特徴1:徹底したリアル志向

シン・ゴジラはキャッチコピーの現実(ニッポン)対虚構(ゴジラという文言からも分かるように、怪獣対怪獣ではなく、日本政府対ゴジラです。

そのため、プロデューサーの山内章弘氏は「ゴジラという“虚構”以外は全てが“本物”ですと述べています。

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つまり、

ゴジラという“災害”が発生した際に、官邸危機管理センターでは官邸連絡室が立ち上がり、官邸対策室ができ、緊急災害対策本部が出来る。

現在の法体制の中でゴジラはどういう扱いなのか、駆除するのか、捕獲するのか。駆除するとしたら自衛隊法のどれを適用できるのか、法律上の解釈をクリアしたとして市街での火器使用から発生する私有財産の被害をどうするのか、戦場となる地域の道交法はどうするのか。

などがこの映画では徹底的に練り上げられています。

 

このリアルさが、官僚の活躍を引き立て、日本人が身近に感じることができる映画になっています。

山内プロデューサーによると、庵野監督は「いわゆる普通の映画でヒーローになる人たちは出てこない映画」という方針を当初より立てていたそう。

 

この日本政府対ゴジラを演出するためにわざわざ霞ヶ関・永田町・東京までゴジラがやってきたと言えるでしょう。

官僚もこの災害の当事者になることで否が応でも奮起しなければならない状況に陥ります。

 

これらのリアル志向が日本のありのままを映しだすための特徴の一つであり、ハリウッドには決して撮れないと評される理由だと感じました。

 

特徴2:ゴジラという象徴

初代ゴジラ戦争原爆といったテーマ性を内包しているのと同じように、今回のゴジラでも東日本大震災だったり、戦後日本の抱える諸問題だったりの象徴であるなんてことはどんなレビューサイトでも指摘されています。

 

タイトルの シン には

新、神、真、進、震、sin(罪)

など、あらゆる意味に取れることからもテーマを一つに絞ったものではないことが分かります。

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       1954年版ゴジラ           シン・ゴジラ ゴジラ

 

パンフレットによればゴジラのデザインのコンセプトは“原点回帰”。初代ゴジラのように怖いゴジラを目指したデザインになっています。

 

このことについてゴジラのイメージデザインを担当した前田真宏氏は「ファーストのゴジラに包含された原水爆のイメージから遠い時代にいるが、3.11によってそれまでのエンタテインメント的なアプローチからリアリティに引き戻され、それを体現したものを作らなければいけないと感じていた」と述べています。

 

また、今回のゴジラ進化の果てに行き着くのは何なのかという考えでもデザインされています。キャラクターデザインを担当した竹田隆之氏はこう述べています。

自己分裂していく生物なので尻尾の先には形成不全といいますか、まだできかかっている感じの歯や骨が生えている。完全生物ですから、すべての生物の要素が入っているという解釈ともとれます。(中略)庵野さんには人間の要素もほしい、とも言われていたので、歯は人の歯にも見えるようにしてあります。

庵野監督はそれに加えて、ゴジラの頭部をある角度から見ると“キノコ雲”に見えるようにとも注文したらしく、ラストシーンで焼きただれた人間のようなものが尻尾に現出しているカットと合わせて、ゴジラという存在に何かしらのテーマ性を含ませたような意図があるように思えます。

 

竹田隆之氏が述べる自己分裂していく生物という点は、作中内でも指摘されており、巨災対は「個体が群体化し、小型化、さらに有翼化して世界へ……」という予測を立てていましたが、ひょっとしたら進化の果ては人間かもしれません。

尾頭ヒロミの発した「ゴジラより恐ろしいのは人間」というセリフがそれを感じさせます。

 

あらゆる災厄の化身であるゴジラから人間が現れることに何らかのメッセージ性を感じてしまうのは邪推かもしれませんが、すごく気になるところです。

 

そしてもう一つ、シン・ゴジラのストーリーではなんとか知恵を絞りゴジラという存在を乗り越えていきます。

 

つまり、私たち一人一人の問題をゴジラに投影できる存在であること前提にして、竹野内豊 氏演じる赤坂の「この国はスクラップ・アンド・ビルドで成り立ってきた」という言葉に象徴されるように、「壊されても壊れても何度でも立ち上がろう」というようなテーマ性を私は感じました。

 

その辺りが、英題のgodzilla resurgence(復活)*1からも感じられるのかなと勝手に思ったり。

 

だって、今回のゴジラは初めて日本に現れたという設定ですしね。まあ、12年ぶりに復活を遂げたゴジラの新シリーズという意味合いが強いのかもしれないですが。

 

そんな中で、ストーリー的にもゴジラを凍結することで含みを持たせつつ、維持という形で怪獣ファンにも受け入れられる終わらせ方になったのではないでしょうか。

 

特徴3:庵野作品ということ

庵野監督の作品には特徴があります。今回もその空気を存分に感じることができました。

 

樋口真嗣監督によれば日本映画とは思えないほど空撮をしたそうです。

この引きの絵を通して、見慣れた景色を迫力ある映像に見せています。

 

また、高層ビル群を格好良く写したり、避難する人々を載せたバスが道路一面を埋め尽くしたり、パイプが入り組んだ工場の絵を見せたり、巨大な机を囲んで会議をする人々を見せたり、戦車が一斉に砲身を一方向に向ける絵を見せたり、爆発を派手に見せたりするような、大規模建造物や一体感を格好良く見せる絵などはまさしく庵野作品だなと感じてしまうところです。

 

これらの群・集団の格好良さを描いているような演出は、まるで本作のストーリーにおける集団で解決することの格好良さを補強するようだなとも個人的に思いました。

 

そして、前述した通り、読む暇もなく止めどなく流れる明朝体テロップ。

岡本喜八作品が好きな庵野監督がリスペクトしたその演出は、代表作である「日本のいちばん長い日」「激動の昭和史 沖縄決戦」に見られるようなテロップ演出、カット割を髣髴とさせます。

これらの演出が刻一刻と変化する事態を感じさせ、一種のドキュメンタリーを見ているかのような気分に陥らせられました。

 

また、ゴジラという存在自体も新世紀エヴァンゲリオンに見られる使徒のような進化の果ての存在という点で一致しています。

 

特徴4:単独制作作品

この映画は製作委員会方式ではないことが2015年の段階で指摘されています。

製作委員会とは各企業に出資を募り、各社の出資比率に応じて得られた収入を配分するという方式を指します。

 

各出資会社は、窓口権(交渉窓口のようなもの。ゲーム会社ならゲーム化に関する交渉権、テレビ局なら放映権、映画配給会社なら配給権など)を得て、製作委員会に権利料を払い、関連商品等の販売によって利益を得るという仕組みです。

 

資金調達が容易で、リスク回避・分散も果たせる一方、各企業の思惑による制作現場への介入や権利関係の複雑さ、自社の流通チャネルでの短期回収を目的とした出資を行うことによる意思統一が困難であるなどの制約があります。

 

今回のシン・ゴジラでは日テレ等の関与は見受けられるものの、ほとんどを東宝が出資し、単独で制作されたと思われています。このことから監督が好きに作品を作る環境が整った結果、この傑作が生まれたとも言われています。

 

 

 

 

気になったこと 

  • オマージュ的要素

特撮に関しては、初代ゴジラと1984年版しか見ていないのであまり指摘できないのですが……

 

ストーリー面

ゴジラという名前が付けられる経緯について、牧悟郎の出身地である大戸島の伝説、呉爾羅からとったものであるという説明が劇中でされます。

この大戸島の伝説、呉爾羅は初代と同じものです。

 

また、ゴジラの恐怖感はまさしく初代(1954年)を意識している点でしょう。特にゴジラによって死ぬ人々を描いた点は正にそうです。

 

話の大筋は84年版ゴジラのように政治的要素を強く押し出したものであり、核使用の是非を巡るアメリカとの攻防もそっくりと言えるでしょう。

そして、本作のキーパーソンである牧悟郎の名前は、84年版ゴジラにおける牧吾郎という新聞記者に対するオマージュと思われます。怪奇大作戦の牧史郎に対するものかもしれません。

 

(追記)

「八岐之大蛇の逆襲」の要素を取り入れていることも分かりました。

八岐之大蛇の逆襲はDAICON FILM時代に作られた自主映画です。

DAICON FILMとは庵野秀明監督や樋口真嗣監督も属していた同人制作集団のこと。「ヤシオリ作戦」のヤシオリはヤマタノオロチを酔わせた酒の名前でその要素も見て取れます。

 

演出面

上述した通り、監督が好きな岡本喜八作品の影響は随所に感じられます。キーパーソンである牧悟郎の姿も岡本喜八のものですしね。

冒頭の空のボートのシーンは84年版ゴジラ冒頭の第五八幡丸に乗り込むところに似ているなと思ったり。この時の、空のボート「グローリー丸」の名前は、初代ゴジラの貨物船「栄光丸」から取ったものでしょう。

 

音楽面

鷺巣詩郎の曲の他にも

「初代ゴジラ」「キングコング対ゴジラ」「メカゴジラの逆襲」「宇宙大戦争」「三大怪獣地球最大の決戦」「怪獣大戦争」「ゴジラVSメカゴジラ

などから流用しており、リスペクトに余念がありません。

 

また、セルフオマージュとしてエヴァンゲリオンの曲であるDECISIVE BATTLEのアレンジも頻繁に流れます。

シン・ゴジラ音楽集

  • 体長 

シンゴジラ(第3形態時)の設定身長は57メートル。全長は、168.25メートルです。
シンゴジラ(第4形態時)の設定身長は118.5メートル。全長は、333メートルです。
シンゴジラ(第4形態時)の設定体重は、92000トンです。

 

庵野監督の好きなものといえば兵器。これほど長いものといえば軍艦。

第4形態時の身長57mは船にしては短すぎるので別の何かから取ったのでしょうか? 全長168.25m航空母艦鳳翔と一緒です。

第4形態時の身長118.5mは陽炎型駆逐艦と一緒で全長333mニミッツ級航空母艦と一緒です。

第4形態時の体重92000tとなるともう豪華客船並の重さなのでちょっと分からないですね……大和で65030tなので。

 

もしかしたら違うかもしれません……

 

  • 牧悟郎という存在

牧悟郎は元城南大学統合生物学教授で日本から追放されるように米国へ渡り、エネルギー関連の研究機関に帰属した老人です。

 

牧は妻を原爆で失い、核も日本も恨んでいた人物。冒頭の小型船「グローリー丸」は牧のものだったんですね。牧は「私は好きにした。君らも好きにしろ」というメッセージだけ残して、劇中に写真以外一切登場してきません。

 

仕組むだけ仕組んでから、劇中に一切でてこない存在という不気味さには、私は「機動警察パトレイバー the Movie」の帆場暎一を連想しました。

 

そんな牧は一体何を好きにしたのでしょう。矢口蘭堂も同じ問いかけをしています。

 

牧という存在を知る手がかりは、「グローリー丸」の中に残されていた宮沢賢治の詩集「春と修羅」しかありません。

 

文学にも明るくなく、正直なところ全然分からないですが、牧悟郎という存在について何か思うところがありましたら是非教えて欲しいです。

 

ゴジラは地中貫通爆弾でダメージを負っていたことから、対空放射火炎をどうにかすれば核攻撃で恐らく倒せるでしょう。それなのに、何故、使わずに済むプランを残したのでしょうか。

 

また、牧がゴジラに人間の遺伝子を与えて進化を促したのか、それとも自己選択による進化なのかなど、牧という存在に対する疑問は増すばかりです。

 

声に出したい日本語

庵野秀明という男が天才であることの証左。

今までゴジラが破壊してきたインフラが逆襲した瞬間ですね。

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 パンフレットより

 

 

  • 最後に

 「私は好きにした。君らも好きにしろ」は監督からのメッセージなのかなとかとか……受け手が勝手に意味を付加していくのは良いことではありませんが、それほど考え甲斐のある作品です。

 

庵野監督は「先入観なしに見て欲しい」と仰っています。実際、先入観なしに見て凄く面白かったです。

 

また、庵野監督はゴジラよりウルトラマンが好きなようで、熱狂的なゴジラファンじゃなかったからこそこんな面白い作品が撮れたのかなと思っています。好きなものふぁと色眼鏡が入って自分の好きなものの押し売りになってしまうので。

 

この夏、シン・ゴジラを見てみるのはきっと有意義だと思いますよ。

 

 

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ソース

『シン・ゴジラ』—庵野秀明が今の日本でゴジラ映画を作る意味 | nippon.com

庵野秀明、エヴァからゴジラへ創造の裏側4~シン・ゴジラを作った男たち -音楽制作編(1/2) - シネマトゥデイ

庵野秀明、エヴァからゴジラへ創造の裏側~『シン・ゴジラ』を作った男たち - こだわりのビジュアル(1/2) - シネマトゥデイ

庵野秀明、エヴァからゴジラへ創造の裏側3~シン・ゴジラの世界を追求した美術の裏側(1/2) - シネマトゥデイ

庵野秀明、エヴァからゴジラへ創造の裏側2~巨大生物襲来への妥協なきリアル - シネマトゥデイ

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