VRの科学―「何故、私たちは“錯覚”するのか」
あいさつ
どうも、TRYDERです。
最近、僕はこんなニュースを目にしました。
むせる
ATとはArmored Trooperの略で、アニメ装甲騎兵ボトムズに登場するロボットのことです。
▲代表的なATであるスコープドッグ
こいつに乗って、バトリングと呼ばれるAT同士の試合をVRで体験できるという最低野郎にはたまらないアトラクションがあったとは……ッ!
そしてこんなニュースも目にしました。
殺す気か?
僕はロボット好きで、TRYDERという名前もトライダーG7から取ったものです。
▲トライダーG7 こちら宇宙の何でも屋♪
そんな僕が夢想していたVRゲームがまさしく現在進行形で現れています。
また、PSVR発売日である10月13日にはRIGSという対戦型ロボットアクションも出る模様。どうやらロボとVRは親和性が高そうです。
やはり、コクピット視点というのは男の子の夢ですし、それを実現するための没入感を提供するVRはロボと結託、いや合体、いや合身するのが必定だったのでしょう……
そこで僕は思いました。男の子の夢を叶えるVRの没入感ってすげー、科学の力ってすげーと
今回の記事では何故、VRが人間を錯覚させるのか見ていきたいと思います。
VRとは一般的に「仮想現実」を意味するVirtual Realityの頭文字を取ったもので、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を装着することで、虚構を現実のように感じさせる技術のことです。
1.錯覚を利用するということ
人間は五感(視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚)を通して実体を感じ取ります。
実在するものを感覚で捉え、直感で認識してから脳で処理することで、観念として定着させることができるというプロセスを辿ります。
VRのように錯覚を利用した製品は、既に製品として身の回りに溢れています。
例えば、ブラウン管テレビでは走査線と呼ばれる光の線で画像を表示しており、ある一瞬ではただの縞模様に過ぎません。
デジタルカメラなどで画面を取ってみると縞々が表示される様子が見えると思います。
また、画像自体も3つの光を合わせたものに過ぎないにも関わらず、色鮮やかなものだと認識しています。
この時点で実在するものと直感で認識したものが乖離していますよね。
VRゲームもこういった、遠近感、ピント調節、目の視差、立体音響の錯聴などなどの錯覚をフル活用して制作しています。
2.五感相互作用(クロスモダリティ、クロスモーダル)を利用するということ
錯覚とは、視覚だけのものと思ってしまいがちですがそうではありません。
暖色系の色を見ると落ち着いたり、自殺願望者が青色を見ると冷静になったりと、何故か色を見ただけなのに、別の心理的作用が引き起こされることもある種の錯覚でしょう。
ゲームの例を出すと、飛行機のゲームをしている時にGを感じたり、車のゲームをしている時にカーブで身体も傾くなんて経験も錯覚ですよね。
その他にも、かき氷のシロップは味が全て同じなのに風味や色で違うように感じたりなど人間は視覚に頼っている部分が大きいです。
このように、ある感覚が別の感覚を刺激する現象を五感相互作用(クロスモダリティ、クロスモーダル)と言います。
人間は思っている以上に視覚に依存しており、これを利用すればあらゆる感覚を引き出すことが出来ます。
シュードハプティクスと呼ばれる視覚的な映像に影響されて擬似的な抵抗感や力覚を感じてしまう現象もその代表的なものです。
2016年5月31日放送のクローズアップ現代+「あなたの脳を改造する!? 超・映像体験(バーチャルリアリティー)」内でもサマーレッスンをプレイしたホストの方が、ゲーム内でそんな仕掛けをしていないにも関わらず、「吐息を感じた」と言っていました。
このように視覚を利用した五感相互作用を如何に高めていくかが、今後評価されるVRゲームの指標になるかもしれません。
3.虚構を視覚化するということ
人は馴染みの無いものに対しては、一線を引いたある種の虚構として捉える性質があります。
それを可視化し、感覚の一つを支配して訴えかけることで対象者に与えるショックはより大きいものとなります。ここに、エンターテインメント作品としてのゲームとの親和性が得られているわけです。
つまり、感覚で捉え、直感で認識するということに可視化は大きな役割を果たすわけです。
文章を読むより、画像を見た方が情報量も多いですよね。
しかし、光があれば陰があるように間違った表現や恐怖がダイレクトに来てしまうという面もあります。
例えば、虫が嫌な人に対して、辺り一面が虫だらけの映像をVRで見せて心理的強迫を与えてしまうことなどです。
ただの恐怖だけでなく、トラウマを与えてしまう危険性もあるため、VRゲームではクリエイターが細心の注意を払う必要が求められます。
4.VRの構成要素
VRの没入感はいわば人間の錯覚だということが分かりました。
この錯覚をもたらすためには、より人間の感覚に近い環境を整えなければいけません。
VRの重要な構成要素は3つあります。
-
高い追従性
VRの最大の特徴は頭の動きに合わせて映像も動くという点です。この反応が遅いと途端に違和感が大きくなり、虚構の世界だと認識してしまいます。
SIEワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏は、「頭と映像の動きの差が0.02秒より短くなると普通の生活と違和感がなくなる」と言っています。
-
高解像度
見ている世界が嘘っぽいと思わないためには情報量が多いに越したことはありません。そこで求められるのは高解像度です。
人間の眼は450ppi±50ppi程度の解像度認識が限界、iPhone6 Plusは401ppiのため、今のフルHD程度の解像度があれば人間の眼に近いものが作れるようです。
-
広視野角
人間の視野角は約180°と言われています。両目の真横に手を置いてみると実感できると思います。
しかし、これは意識していた場合の視野角で、普段の生活で認識出来る範囲は100°あれば充分なんですね。
従来のヘッドセットだとだいたい45°が限界だったのに対して、VRヘッドセットの100°はまさしく人間の普段の視野とほぼ一緒で、大脳の活動量も増えるそうです。
このように人間の感覚に近づけるという努力が没入感を増幅するのに重要な要素なんですね。
-
+α(ゲーム側の表現)
サマーレッスンの開発を主導した原田プロデューサーはキャラクターとのコミュニケーションにおける3つの大事な要素を見出したそう。
VR技術デモ「サマーレッスン」 東京ゲームショウ2015プレイアブル出展PV より
https://www.youtube.com/watch?v=hj9CMbyJ6q0
その要素とは
- 実在感
- 緊張感
- また会いたいと思うこと
実在感として重要なのが、人間のパーツの要所要所をきちんと描くこと。人間は想像以上に身体のパーツを見ており、これまでのモデルを流用しただけでは人形のように見えてしまうようです。
鎖骨や唇、眉毛などを描写することでこの違和感を取り除けるそうです。
また、周囲の小物もきちんと描くことで、視界内の情報量を高め、実在感が段違いなものになるのだとか。
次に緊張感として重要なのが、狭い空間。狭い空間が緊張感を生み出すという理屈は人間のパーソナルスペースという概念に通じる部分があるのでなんとなく分かりますよね。
このように、ゲーム側での工夫も没入感を高める上で重要なものであるということがわかりました。
ソース
2016/5/31 クローズアップ現代+「あなたの脳を改造する!? 超・映像体験(バーチャルリアリティー)」
2016/3/27 サイエンスZERO“超”仮想現実にようこそ! ~バーチャルリアリティ開発最前線~